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サントリーワイン、ビッグデータ活用で日本ワイン増産を目指す
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サントリーワインインターナショナル(東京都・港区)は、自社の葡萄栽培にビッグデータを活用することを発表した。
自社畑や葡萄の樹木に設置した機器により収集した気象や木の水分量などのデータを分析し、栽培方法を柔軟に改善するほか、果実の最適な熟成を測ることなどに活用する。
2009年から東京大学大学院や三重大学との共同研究に着手した同社は、登美の丘ワイナリーの自社畑にて精度の高いデータを収集し、集めたデータを葡萄栽培に応用する手法について検討を重ねてきた。
データ収集には、主に2種類の計測機器を使用。
年間を通じ気象データを観測可能な測定機器を葡萄畑に設置し、降水量や温度湿度、風速などを計測する。
また、葡萄の樹木に、木の内部の樹液量や土壌の水分量を観測する計測器を設置。
収集したデータは、必要に応じて参照できるよう随時サーバに保管される。
2016年は、登美の丘ワイナリーの自社畑での栽培方法に対し、これまで収集したデータの分析結果に基づく改善を加える。
分析では、同社の畑は銘醸地であるフランス南西部のボルドーと比較し湿度が高く、夏場の日照時間が短い。
このため、葡萄の木が栄養を蓄えやすいよう、枝を従来より長めにし、葉の光合成量を増やす必要があることがわかった。
収穫前にも、土壌の水分量を測定したデータの使用を予定している。
葡萄の果実は収穫前に水分が減ると、熟成が進み糖度が増すので、水分量の計測結果を確認しつつ収穫時期を決定する。
さらに、過去のデータの分析を基に、収穫予定の50日ほど前から葡萄の房を減らすことで、葡萄を最適に熟成させることができるようになると予測している。
また、ワインの原料として栽培される葡萄は、苗木を接ぎ木して育成するのが一般的な手法だが、木の内部の樹液量をチェックすることで、接ぎ木の不具合を早い段階で発見することができるという。
1年を通じて測定することで、品種ごとの糖度が増す時期の違いなどに関しても、データによる裏付けがとれるようになる。
今後は、データを収集する対象の品種も増やしていく予定とのこと。
これまでは、欧州系の品種であるメルロー種とプティ・ヴェルド種の2種類を測定していたが、新たに日本固有品種である甲州種もデータ測定を開始する。
同社では、甲州種の生産増加を計画しており、今まで培ってきたデータ収集・分析手法を適用による栽培の効率化と増産の実現を狙っている。
さらに、今後は登美の丘ワイナリー以外の地域での展開も検討。
長野県にある塩尻ワイナリーにおいても、専用機器を設置しデータ収集を開始する予定とのこと。
地域によって気候など栽培条件が変化するため、生産地ごとにデータを集めて、生産の効率化につなげる。
さらには、国や自治体、また他社のワイナリーとの連携も積極的に推し進める方針だという。
同社から、データの収集や分析、また活用における各種ノウハウを提供するほか、地域ごとにデータを共有できるよう取り組む構えとのこと。
各地のワイナリーなどがデータを活用しやすくすることで、日本ワイン全体の生産の底上げに貢献したいとの意気込みだ。
2016/07/07 日経産業新聞より引用。
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さらに、IT技術を農業に適用した成功例についても目にする機会が多いですよね。
サントリーワインインターナショナル社のデータやノウハウ提供で、日本ワインの品質向上と生産量増加が同時にかなってしまうかもしれないというこのニュース、かなりわくわくします!
また、この分析ノウハウも、世界に誇れる重要な技術になりそうですよね。