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「いいちこ」の三和酒類、ワイン用葡萄畑を2倍に
[公開日]
2017年3月、三和酒類株式会社(大分県宇佐市)は、宇佐市安心院(あじむ)地区に耕作放棄地を含む約10ヘクタールの農地を取得した。
2018年春には、5ヘクタール分の畑にてシャルドネ種、ノートン種、ビジュノワール種を計1200本ほど栽培する予定となっている。
残りの5ヘクタール分は、その翌年の2019年春に植樹する予定だが、苗の種類は検討中だという。
同社は、清酒・ワイン・ブランデー・リキュールなど幅広い商品を手掛ける総合醸造企業。
中でも麦焼酎の「いいちこ」は、「下町のナポレオン」というキャッチコピーで広く親しまれている。
古くからワイン造りも行ってきた同社だが、2001年からは安心院葡萄酒工房を開設し、さらに2010年に農業法人を設立し自社畑で葡萄生産を始め、安心院産のワインを造り続けている。
安心院葡萄酒工房 工房長 古屋浩二氏より、自社畑を拡大した背景についてお話を伺った。
安心院地区では、昭和60年代に行政のパイロット事業として農地を360ヘクタールほどに拡大したが、その後の少子高齢化により農業の後継者が減少し、近年は耕作放棄地が増加している傾向にあるという。
農業の衰退に歯止めをかけるべく、農林水産省も農地再生に注力しているものの、葡萄農家の新規参入ははかばかしくない。
一方、地元産ワインの造り手である安心院葡萄酒工房は、商品生産が市場の需要に追い付かない状況となっていた。
生産するワインのセパージュを年ごとに調整するなど、味わいの品質向上を目指しつつワイン生産量を安定させる工夫を行ってはいるが、原料となる葡萄の不足が深刻化しており、このほど自社畑の拡張に踏み切ったという。
地元にて葡萄栽培の技術者や管理者の育成も行っており、必要な人手が季節によって大きく変動するのが不安材料ではあるが、今後の農地拡大に応じて人材を増やすことも検討している。
農地の拡大により、将来的には、ワインの年間出荷本数(720ml/本)を約21万本と約1.4倍に増加させる狙いだ。
日本国内のワインコンクールで多くの賞を獲得するなど、高い評価を得ている安心院葡萄酒工房。
2016年12月に行われた日露首脳会談では、「安心院スパークリングワイン」がプーチン大統領との会食に供され、話題となった。
(参照:日露首脳会談にてプーチン大統領が口にした日本ワインリスト!)
三和酒類株式会社の主力商品の一角を担う存在として、また大分の産業発展の鍵のひとつとして、大きな期待を寄せられている。
取材協力・画像提供:安心院葡萄酒工房(三和酒類株式会社)
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