初心者でも3分でわかる!ワイン用語集
テロワール
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葡萄を育てる風土、環境そのもの
「土地」を意味するフランス語「terre」が語源となっており、ワインやお茶などの原料の栽培における地理や気候によって生じた作物の特徴を指す言葉。
ワイン造りの長い歴史を持つフランスでは、ワインの造り手たちがワインの味わいを様々に研究してきました。
異なる地域のワインや、同じ葡萄園の中でも区画ごとに生産したワインを比較し、味わいの違いはどこから生じるのかを観察する中で、「テロワール」の概念が形作られていったとされています。
葡萄は、果物の中でも特に生育環境を反映しやすい植物で、同じピノ・ノワール種の葡萄でも、フランスとドイツとチリではそれぞれに違う個性が現れます。
更には、同じフランス国内でも、ブルゴーニュとアルザスではまた違う個性が生じ、究極的には隣り合う畑でも異なる個性が現れたりもするという、驚くべき特性があります。
葡萄の個性に影響を与えるのは、土壌(水はけの状態や土中に含まれる栄養素)、気候(気温や降雨量)、場所(日照量、一日の気温差、風量)など。
隣り合う畑から採れたカベルネ・ソーヴィニヨンでも個性が異なる理由は、こうした様々な要因が複雑に影響を与えているからです。
日本語に直訳するのが難しい「テロワール」という言葉は、葡萄を育む自然環境の個性、と考えると、そのニュアンスに近づけるかもしれません。
【初心者でもすぐわかる】ワイン(葡萄)の持ち味から想像できる「育った環境」
「テロワールがよく表現された味わい」といったテイスティングコメントを初めて見た時、「???」となったワイン初心者は多いのではないでしょうか。
日本語で表現するなら、「風土」が一番近い言葉かもしれませんが、ワインの世界ではもう少し深い意味を持って使われている言葉のようです。
しかも、ややこしいのが、ワインの味わいから逆説的に葡萄の生育環境が想像されているという点。
例えば「非常にミネラル感があり、石灰質土壌の土質がよく表現されているワイン」といった、製造過程を推理するかのような味わい方をする食べ物や飲み物って(少なくとも日本では)あまりない気がします。
ワインに馴染みのない一般消費者の感覚では、「ワインの世界では、土地の特徴を味わいで表現する風習があるのだろうか……」と悩んでしまうかもしれません。それは駄目代だけかもしれませんが。
「テロワール」を理解するには、まず葡萄の特性を知る必要があります。
葡萄は生育環境から影響を受けやすく、同じ品種であっても土地が違うと味わいに大きな違いが出るというデリケートな植物です。
リンゴや桃といった果物も、育つ環境によって味わいが変わるものですが、葡萄は変化が特に顕著。
どうしても、育った環境が個性になって大きく現れてしまうのです。
ワインの造り手たちは、ワインの味わいをコントロールするべく葡萄の栽培についても研究を重ねる中で、テロワールという概念に行き着きました。
葡萄と風土との密接で複雑な関係を紐解く先人の知恵を一言で表現した言葉が「テロワール」と言えます。
この「テロワール」を手がかりに、ワインの造り手たちは自分の求めるワインを作るべく、土壌を改良したり、ニューワールドでワイン造りを始めたりといった挑戦を重ねてきました。
テロワールに共通点のある土地では、例えばフランスとアメリカほど離れていても、近い味わいのワインが生まれることがあります。
「テロワール」は、ワイン消費者にとっても、ワインをより深く知り楽しむための手がかりです。
例えば、シャブリの味わいがお好きな方は、シャブリ地方の「冷涼な気候」「石灰と粘土の混ざった泥灰土」「太古は海だった場所で牡蠣の貝殻の化石がたくさん見つかる」といったテロワールで造られたシャルドネのワインを探すと、雰囲気が近いワインを見つけられる可能性が高い、ということです。
(シャブリと同じテロワールが他にあるかどうかは別として……)
ちなみに、日本ワインでも、テロワールを意識して造られたワインがあります。
「シャトー・メルシャン 北信シャルドネ RGC 千曲川左岸収穫 2016」と「シャトー・メルシャン 北信シャルドネ RDC 千曲川右岸収穫 2016」。
信濃川水系の千曲川の右岸と左岸で土壌が異なることに着目して、それぞれの区画で造られた2本のワインです。
同じメーカーが同じエリアで育てたシャルドネで造ったワインにも関わらず、味わいが大きく異なっており、比較してみると「テロワール」の意味を体感できます。
ワイン造りの歴史が生んだ「テロワール」という概念を、まずは舌で感じ取ってみてはいかがでしょうか。
シャトー・メルシャン 北信シャルドネ RGC 千曲川左岸収穫 2016
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