知ってる?ワイン話
陸前高田の海がワインを美味しく育てる『広田湾海中熟成プロジェクト』
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陸前高田の海中でワインなどを熟成する『広田湾海中熟成プロジェクト』
地元ワイナリー「神田葡萄園」のワインのほか、好きなワインの持込みも
三陸わかめやホタテ、牡蠣など、海産物の豊かさと品質の高さで知られる三陸エリア。
世界三大漁場のひとつに挙げられる三陸沖は、魚や貝だけではなく、近年、日本酒やワインも美味しく育んでいます。
陸前高田市の広田湾で展開されている『広田湾海中熟成プロジェクト』は、海中に日本酒やワインなどを約10ヶ月ほど沈めたまま熟成させるという、ロマンにあふれた企画です。
海の波でもたらされる絶え間ない揺れと安定した水温が酒に深みとまろやかさをもたらすと言われ、近年は海中熟成酒の企画が日本各地でも実施されるようになりました。
そんな中、『広田湾海中熟成プロジェクト』の大きな特色のひとつは、広田湾の漁場見学を兼ねた熟成酒の入水体験メニュー。
世界に誇る海産物を育む海を実際に目にし、地元漁業関係者の海への思いを聞きつつ、ボトルを海中に沈めるという体験型サービスです。
マイボトル(?)が熟成する場所を体感しつつ、海中に沈む様子を見守った想い出は、その味わいを一層深いものとするに違いありません。
沈める酒類は、日本酒の蔵元「酔仙酒造」の日本酒、陸前高田に自社畑を持つワイナリー「神田葡萄園」のワインといった地酒を海中熟成に選ぶことができます。
また、これら地元の酒造メーカーが手掛けたもののほか、好みのお酒の持ち込みも可能という点も特色のひとつ。
この『広田湾海中熟成プロジェクト』を立ち上げたのは、陸前高田で地域振興事業を展開する鍛治川氏。
鍛治川氏がプロジェクトをスタートした経緯、また体験型サービスを展開する理由、プロジェクトにかける想いとともに、『広田湾海中熟成プロジェクト』をご紹介したいと思います。
目次
▼海産物もお酒も美味しい土地、陸前高田が生み出すマリアージュ『広田湾海中熟成プロジェクト』
▼東日本大震災の復興支援の”その先”へ……ビジネスで地域に力を取り戻す取り組み
▼海中熟成酒の購入や熟成酒の入水体験申し込みは
海産物もお酒も美味しい土地、陸前高田が生み出すマリアージュ『広田湾海中熟成プロジェクト』
広田湾産の海産物は、東京の高級スーパー(成城石井)で取り扱われているワカメや、ここ3年ほど築地や豊洲のでのセリで最高価格をつける牡蠣など、市場から高く評価されるものが豊富です。
また、お酒も大変美味しく、美食家にはたまらない土地柄。
この陸前高田では、古くから果樹栽培を営んできた「神田葡萄園」が、地域に根ざしたワイン造りを行っています。
陸前高田の自社畑で収穫した葡萄を醸造して造られるワインは、地元の海産物とのペアリングも最高。
地元ワイナリーによるワインを広田湾で熟成させるとなれば、地元の海産物とのさらなるマリアージュも期待できてしまいますね!
2020年現在、海中で熟成した神田葡萄園「リアスワイン」シリーズ数種類を化学分析し味覚測定を行っているそうです。
先駆けて分析を完了した、同じく海中熟成した日本酒「奇跡の一本松」では、”酸味の緩和によるまろやかさの増進”、”海中熟成期間の長さに準じて濃醇(飲みやすさの減少=ボディ感の強化+うま味増加)する傾向がある”ということが判明しているそうで、海中熟成ワインの分析結果にも期待が寄せられています。
『広田湾海中熟成プロジェクト』では、自分で選んだボトルワインなどの持ち込みを受け付けている点も大きな特徴です。
海中熟成による変化に興味を持った方や、海がデザインする世界に1本だけの特別なボトルを手に入れたい方などにオススメです。
東日本大震災の復興支援の”その先”へ……ビジネスで地域に力を取り戻す取り組み
『広田湾海中熟成プロジェクト』は、酒類に付加価値をつける試みにとどまらず、熟成酒の入水体験メニューも大きな特色となっています。
海中熟成酒は近年、各地で行われるようになってきましたが、体験型コンテンツとしての海中熟成はまだ世界でも珍しい存在。
実は、『広田湾海中熟成プロジェクト』の体験型コンテンツには、東北の復興に向けた様々な人々の思いが重なっています。
プロジェクトの事務局を務める鍛治川氏は、ポータルサイト「ぶらり下北沢」の運営など東京で地域振興事業を手掛ける中で、東日本大震災における寄付をきっかけとして東北を訪れました。
神戸に親戚や友人が多く、阪神・淡路大震災にも深く関わってきた鍛治川氏は、「復興支援は続かない。ビジネスを立ち上げて、復興支援ではない地域を元気にする取り組みが必要」との思いから、復興支援の”その先”を創ることを目指し、陸前高田で地元の漁師の方々とともに活動を続けることを決意。
ネット販売や首都圏でのイベントや飲食店向けの販売などを行なう中で、年配漁師なら誰でも知っている「お酒を海に沈めると美味しい」というエピソードを耳にし、海中熟成の企画を思い立ったそうです。
陸前高田には「奇跡の一本松」という観光スポットが生まれたにも関わらず、観光客は通過するのみにとどまっており、地元に利益として還元されていないという課題もあったことから、この海中熟成をひとつの体験型コンテンツとして地元のビジネスにつなげられないか……と考えました。
一方、一般の方に漁船での漁業体験を提供する広田湾遊漁船組合という団体も生まれました。
震災当時の復興支援に駆けつけた支援者を、漁船に乗せて海から復興状況を見てもらったり漁業体験を提供したりといった活動を行う組合です。
支援者に広田湾の海産物を振る舞いたいが状況的に難しく、臍を噛む思いでいた地元漁師たちが中心となり、支援への返礼として体験型コンテンツを提供するという活動を続けています。
『広田湾海中熟成プロジェクト』の体験コンテンツは、この組合が主体となって実施しています。
世界でもまだ珍しい、海中熟成酒の入水体験。
広田湾の自然の恵みと、その地で暮らす人々の思いに触れることができる貴重なアクティビティでもあります。
海中熟成酒を熟成させる海を肌で感じ、その海を愛する方々の話を聞き、さらにその海で育った海産物も味わうことで、より一層味わい深くなることでしょう。
海中熟成酒の購入や熟成酒の入水体験申し込みは
現在、海中熟成酒の取り扱いは、現地販売のほか、陸前高田市で雑貨や地酒を扱っている「いわ井」にて一部通販も可能となっています。
■広田湾海中熟成プロジェクト公式サイト 「お家で楽しむ」
http://www.burari-kesen.com/aged/get/retail.html
現時点(2020年3月)では、通販は日本酒のみとなっておりますが、今後はワインの取り扱いも予定しているそうです。
また、広田湾海中熟成体験は、公式サイトから申し込みが可能です。
漁船の乗船体験や熟成酒のほか、広田湾自慢の海産物セットもついてきます♪
ワインなどの持込みももちろんご相談ください。
■広田湾海中熟成プロジェクト公式サイト「広田湾海中熟成体験」
http://www.burari-kesen.com/aged/experience/experience.html
対象年齢は6歳以上となっていますので、お子様と一緒にご家族で楽しむこともできる体験型コンテンツです。
海中熟成のロマンを体験してみてはいかがでしょうか?
[写真提供・協力]
合同会社ぶらり気仙
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