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インドで高まるワイン人気、ワインツーリズム
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つい最近まで、人前での飲酒がタブーであったインド。
そのインドで今、ワインツーリズムの人気が急速に上昇しており、注目を浴びている。
インドには現在90軒以上のワイナリーがあり、その最大手であるスラ・ビンヤーズでは、ナーシク市に全35室のホテルを含むリゾート施設を建設した。
その一帯はインドワイン全体の75%を産出する、インドワインの中心地だ。
スラでは、醸造施設の見学はもちろん、広々としたテイスティング・ルームで、同社のワインを試飲できる。
また、ビジターセンターや土産物店、スパに高級レストランなども隣接している。
スラを創設したラジーブ・サマント氏は、米スタンフォード大学の卒業生で、シリコンバレーでの勤務経験も持つ人物。
1999年の設立以来、インドのワイン市場の60%のシェアを握る同ワイナリーには、毎年約2万人の観光客が訪れる。
「現代の進歩的なインド人は、旅行先で色々な美味しい物を食べて舌が肥えており、ワインへの関心も高い」と語るサマント氏は「インドのようなワイン新興国においてこそ、ワイン初心者にワインの楽しさを教えられるワインツーリズムの推進が重要だ」と、ワインツーリズムの狙いも語った。
スラと同じマハーラーシュトラ州のヨーク・ワイナリーやフラテッリ・ワインズ、フォーシーズンズをはじめ、カルナータカ州のヘリテージやアルパイン、グローバー・ザンパなどのワイナリーも、観光客の誘致に意欲的だ。
インドの平均的なワイナリーツアーの料金は、テイスティング代も含めて1人平均25ドル。
カップル向けのパック(約150ドル)や、団体向けの貸切プランもあり、様々なニーズに応えている。
インドでのワインツーリズム人気について、専門家は、インド人のライフスタイルの変化が要因であると分析している。
西洋文化からの影響が大きく、また、ワインを好む女性の社会的・経済的地位の向上も一因とも指摘する。
近年、ワインツーリズムがもたらす経済効果に気づいた各州政府は、ワインツーリズムの推進に注力し始めた。
マハーラーシュトラ州では、ワインの醸造や小売などにはそれぞれに異なる免許を別々に取得しなければならなかったが、現在では同時取得が可能になっている。
その一方、課題もある。
宿泊施設が不足していることや、ワイン取引関連の法律や取引慣行の複雑さがワインツーリズム推進の妨げとなっている。
さらに、市場での競争が欠如していることも問題視される。
インドのワイン市場は、少数の業者が全体の8割を支配する寡占状態にあると専門家は指摘する。
マハーラーシュトラ州のワインコンサルタントは、政府はワインの生産拡大や品質向上、投資奨励に向けた施策を打ち出しており、「成功すれば、雇用拡大や周辺産業の育成、そして政府にとって貴重な外貨獲得につながる」と語る。
2015/11/11 日経産業新聞より引用。
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特に、上記記事でも取り上げられているスラ・ヴィンヤーズは、複数の一流レストランでワインリストに入れられているほか、ワイン・スペクテーター誌でも特集されるなど、物珍しさだけでなく品質で高い評価を得ているワイナリーでした。
ワイナリーのクオリティの高さに加え、インド国内でもワイン愛好家が増えていること、また西洋的なライフスタイルへの変化など、様々な要因がワインツーリズム人気につながっているようですが、この経済的なチャンスを各州政府が生かせるかどうか、同じワイン後進国である日本としても気になるところですね……。