知ってる?ワイン話
大阪万博で出会う、アルザスの“もうひとつの顔”――ブレンドが織りなす豊かな個性
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リースリングやピノ・ノワールだけじゃない!
多彩な葡萄とブレンド文化が息づく、アルザスワインの奥深い世界へ
白ワインの名産地として知られるアルザス。
これまでのトリビアシリーズでは、リースリング、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・ノワールを紹介してきました。
第5弾となる今回は、アルザスの“もうひとつの主役”ともいえる葡萄たち――
ミュスカ、ピノ・ブラン、シルヴァネール、そして伝統的なブレンドワイン「エーデルツヴィッカー」と「ジョンティ」に焦点を当てます。
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多彩なワインと、歴史ある品種ブレンド
アルザスでは、リースリングなどの主要4品種に加え、ミュスカ、ピノ・ブラン、シルヴァネールの3種もAOC格付け品種として大切に栽培されています。
ミュスカは新鮮な葡萄そのものの香りと花のようなアロマが特徴。
香りの印象に反して、ほとんどが辛口に仕上げられ、食中にもよく合います。
ピノ・ブランは白桃や洋梨の果実味に花のニュアンスが重なる、やわらかでなめらかな味わい。
そしてシルヴァネールは、柑橘や白い花、ハーブを思わせる軽快な香りが魅力で、フレッシュな果実味が食卓を明るく彩ります。
現在、アルザス全体の栽培面積では、ピノ・ブランが26%、シルヴァネールが4%、ミュスカが3%。
それぞれが個性を活かしながら、地域の味わいの多様性を支えています。
修道士が伝えた歴史と、ブレンド文化の進化
アルザスのミュスカには、16世紀に伝わった「ミュスカ・ダルザス」と、19世紀に持ち込まれた「ミュスカ・オットネル」の2種があり、現代も両者をブレンドして造られるのが一般的です。
一方、ピノ・ブランは、ピノ・ノワールの突然変異によって生まれた品種で、19世紀末にブルゴーニュで発見された後、アルザスに広まりました。
オーストリア原産とされるシルヴァネールは、語源から「トランシルヴァニア発祥」との説もあるほど、長い旅を経てこの地に根づいています。
近年は品質向上が進み、2024年にはグラン・クリュ・ゾッツェンベルクで使用が認められました。
また、アルザスの特徴のひとつがブレンド文化。
「エーデルツヴィッカー」はドイツ語で「高貴な(Edel)ブレンド(Zwicker)」を意味し、品種や比率に制約がない自由なスタイルが魅力です。
一方で「ジョンティ」は、醸造は葡萄品種ごとに行うことが義務付けられており、その上で、リースリング、ミュスカ、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネールのいずれかを半分以上使い、残りをピノ・ブランやシルヴァネールなどで補うという、厳格なルールのあるワイン。
それぞれの個性が調和し、料理との相性も広がります。
ソムリエが語る、“家飲みでも輝く”アルザスワイン
1995年世界最優秀ソムリエの田崎真也氏は、こう語ります。
「果実味が強すぎず、しっかりした味わいのシルヴァーナーは、レストランだけでなく家飲みでも重宝するワインだと思います。豚肉との相性がいいので、煮る、焼く、揚げる、どんな料理とも合います。とんかつを塩で試してみてください。また焼き鳥にもおすすめです。鳥の皮の脂の風味にも、シルヴァーナーのちょっとしたスパイシーさが合うでしょう。日本人のテイストに合うワインだと思います」
また、ブレンドワインについては、
「ゲヴュルツトラミネールの強い個性とリースリングのフレッシュさが調和したり、それぞれの品種のバランスがとてもよいものが増えてきましたね。そのぶん、幅広い料理に合わせやすいので、さまざまな楽しみ方ができると思います」とコメント。
家庭の食卓から万博のフランスパビリオンまで、アルザスのワインが活躍する場はますます広がりそうです。
大阪万博では、フランスパビリオンで提供されるアルザスワインを通じて、地域が誇る多様な葡萄とブレンドの奥深さを体感できます。
“白だけじゃないアルザス”を、ぜひその目と舌で確かめてみてください。
2025/09/01 アルザスワイン委員会 プレスリリースより引用
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