知ってる?ワイン話
【月の港に続く道 第1回】グラスの器量~ワインLOVERのストレッチ~
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近年、ワインの種類は劇的に増え、ワインの楽しみ方の多様化も進んでいます。
気軽に楽しめるようになった反面、ともすれば情報量の多さに飲み込まれて戸惑うことも……。
スペシャルワインコラム「月の港に続く道」では、ワイン知識の本質と虚実、時代に即した新たな魅力について考える機会を提供します。
執筆は、『「ビズ・ワイン」革命始まる』を著作に持つ今西正典氏。
日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートやJ.S.Aワイン検定講師としての豊富な知識を武器に、MBA経営学修士でありアジア各地にて貿易事業を展開するビジネスパーソンによる、ワインを楽しみながらQOLを向上させるノウハウを学ぶことができます。
フランスワインの聖地ボルドーは別名「月の港」と呼ばれます。
本コラムは、生涯続くワインライフを楽しむうえでの灯台となり、月の港に続く道を照らすことでしょう。
第1回 グラスの器量~ワインLOVERのストレッチ~
知らずに飲むのはもったいない!
ワインの魅力を引き出す「グラスの器量」
ワイン本来の魅力を引き出すのはワイングラス
ワインスクールの授業といえば、産地や品種についての座学と実際のティステイングの繰り返しです。
好きなことを学ぶと言っても数を重ねていくうちに緊張感も薄れ、その思い出も徐々に記憶の渦中に溶けていってしまいます。
しかし、ティスティングにボルドーの一級シャトー・ム―トン・ロートシルトがでてきた時とワイングラスの講義だけは鮮明に覚えています。
グラスの大切さは、実際にテイスティングで体験してみるとよく理解できます。
カリフォルニア、ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンをリーデル社のグランクリュという大振りのワイングラスで飲みます。
ブラックベリー、ブル―ン等の熟れた黒系果実にスパイス、アメリカンオークの香ばしい風味が鼻を通ります。
フランスボルドーとは違う華やかなアロマと高いアルコールが生み出すかすかな甘みは、その時間が豊かに過ごせていることを実感するのに十分です。
次に同じワインを、コンビニにあるキャンプ用の薄いプラスチックのコップに入れます。
すると、何の香りもしないただ濃いだけの赤ワインにしか感じません。
本当に同じワインなのかと驚いたのは私だけではありません。
最初のグラスワインの価格が2千円としても妥当かなと思いますが、コップのワインは500円でもどうかなと感じてしまいます。
原因は、コップではワインの香りが漂う空間の体積とワインが空気と触れる表面積があまりにも少ないからでした。
いいワインのポテンシャルをフルに引き出すためにはそれなりのグラスが必要です。
良いグラスがない場所で飲むワインは、高級品は必要ありません。
ワイングラスがない場合のワインの楽しみ方も知っておこう
でも、香りが立たなくてもそれなりの楽しみ方があります。
ビールやソーダ―で割ったスプリッツアーとして飲むことにより、カジュアルな料理やスナックにマッチしたぐい飲みができます。
フルボディのカベルネではできない楽しみ方です。
ワイングラスの器量を上回るワインはもったいない!? 良いワインを楽しむためのワイングラスとは
ワインとグラスには切ることが出来ない関係があります。
ワインの購入を考える時はどのグラスで飲むかも想定してイメージするようにしてください。
グラスは器であり、器には器量があります。
持っているグラスが限られる場合には、そのグラスが引き出せる以上のポテンシャルを持っているワインを買うのはもったいないかもしれません。
フルボディの赤ワインは、葡萄本来の果実の第一アロマ、発酵により生じる第二アロマ、熟成がもたらす第三アロマが織りなす複雑性があり、これこそがプレミアムワインの源泉となってます。
十分に香りを楽しめる深く大きなグラスを用意しましょう。
フレッシュな柑橘系の酸味を楽しむ若い白ワインの場合は、小さなグラスでも楽しめます。
最近では、ちょっといいシャンパーニュは、長細いフルートグラスでなく白ワイン用の中程度のグラスでサーブする店が増えて来ています。
シャンパーニュは泡を除いたベースワイン自体が作り込まれた高級ブレンドワインなので、泡よりワイン自体の風味を楽しもうという新しいトレンドに基づくものです。
ワインに関するよもやま話をしながら、今日も月の港に続く道を歩みましょう。
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MBA経営学修士でありアジア各地にて貿易事業を展開するビジネスパーソン。
WSET LEVEL 3 AWARD IN WINES、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、J.S.Aワイン検定講師の資格を持ち、ワインをビジネスに活用する「ビズ・ワイン」を提唱。
著書に『「ビズ・ワイン」革命始まる』を持つ。