知ってる?ワイン話
【月の港に続く道 特別編】STAY HOMEとワイン
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『「ビズ・ワイン」革命始まる』著者の今西正典氏による、生涯続くワインライフを楽しむためのスペシャルコラム『月の港に続く道』特別編。
今回は、新型コロナ・ウィルスによるパンデミックがワインの世界にもたらした変化に触れます。
高級ワインの消費シーンの大半がクローズされた中、流通にもたらされた変化とは?
また、ソーシャル・ディスタンスを意識して、ワイン会をリモートで開催するということついて考えます。
「月の港」ボルドーへ続く道を、楽しみながら歩いてみましょう。
特別編 STAY HOMEとワイン
新型コロナ・ウィルスがもたらしたワインビジネスの変化
世界中で日常生活と経済活動に破壊的な打撃を与えている新型コロナ・ウィルスは、当然のことながらワインビジネスにも地殻変動を与えています。
まず、販売面では高級ワインが最も動くハイグレードホテルやカジノ市場が全く機能しておらず、その分野の流通企業は大きな打撃を受けています。
一方、ワインの個人向けネット販売はSTAY HOME対策によりアメリカで前年比60%以上伸びています。
そのキーワードは、D2C(Direct to Consumer)とサブスクリプション(Subscription)です。
D2Cとは、ワインメーカーがSNSなどを活用してわずかな広告費で消費者をつかまえ、問屋や小売店などの流通を介さずに直接消費者にワインを販売するEコマースです。
ワイナリー独自の個性のある製品を低価格で販売することができます。
サブスクとは、毎月一定金額(3千円~8千円程度)の金額で毎月、時期にあった最適なワインが送られてくるというシステムです。
2つのシステムとも生産者はかなりのコストダウンと効率販売が見込まれるため、結果として消費者は良質なワインを低価格で購入することができます。
このスタイルは、コロナ以後もワインの新たな流通システムとして更に拡大していくものと思われます。
また、これを補完するサービスとして、リモートワイン会も広がっています。
アメリカのワインマーケットでは特に、ワイナリーが主宰するヴァーチャル・ティスティングに人気があります。
ユーザーは事前にワイナリーからD2Cコマースで、ワインとツマミ等を購入します。
そして、到着後、そのワインを楽しみながら、リモートでワインやマリアージュの解説を受けるというシステムです。
日本から海外ワイナリーのワインを直接購入するのは難しいですが、日本ワインのワイナリーの直販サイトやSNSサイトでも追随の動きがあり、今後は要チェックです。
リモートワイン会を開催するならテーマや企画をしっかりと
一方、私たちの日常のワイン会もLINEやZOOMを使用したリモート開催が多くなっています。
気兼ねなく参加できて時間やコストを気にすることもないため、参加された方は、思ったよりハードルは低いと思われるでしょう。
でも、結構時間がだらだらと過ぎたり、会話の話題が毎回よく似たものになりマンネリ化してしまうことが多いように見受けます。
ワインLOVERのワイン会としては、毎回、ワインに関する何らかのテーマを決めることにより、筋目の通った会にしたいものです。
各自が用意するワインを、国や品種や値段帯で縛ったり、チーズとワインや缶詰めとワインなどマリアージュの課題を設定して、それぞれが選んだワインを話題に会話を広げていくとワインスキルの向上につながりますし、毎回異なる趣向となり続ける意義も出てきます。
また、それぞれが用意したワインの品種をあてるヴァーチャル・ティスティングも面白いと思います。
レベルによってやり方は様々考えられますが、例えばワインの国名だけ明かして、グラスに注いだ姿とティスティングコメントを各参加者が当人に質問することにより、回答コメントをまとめ他の参加者は答えを導きます。
色彩は色や濃淡、香りは似た香りの植物や花の種類、香辛料、動物系の香りの有無、複雑性などを問い、飲んだ風味は、アタック、酸味、苦み、味わいの余韻などを質問していけば、品種特性のシグソーパズルが少しずつ埋まってくるので答えはいくつかの候補に絞られてきます。
自分が選んだワインについて、キッチリと評価してみることは自分の好みを明確にするうえでも非常に大切なことです。
また質問する方も答える方もある程度の知識も必要となり、緊張感もあり楽しみながら学べる機会となります。
リモートワイン会は、今始まったばかりです。
まだまだ開拓の余地があります。
面白い企画があれば、私にも教えて頂きたいと思います。
今日もワインに関するよもやま話をしながら、月の港に続く道を歩むことにしましょう。
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MBA経営学修士でありアジア各地にて貿易事業を展開するビジネスパーソン。
WSET LEVEL 3 AWARD IN WINES、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、J.S.Aワイン検定講師の資格を持ち、ワインをビジネスに活用する「ビズ・ワイン」を提唱。
著書に『「ビズ・ワイン」革命始まる』を持つ。