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【月の港に続く道 第6回】デイリーワインとプレミアムワインで演出する「緊張と緩和」~ワイン・オシャレ考~
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『「ビズ・ワイン」革命始まる』著者の今西正典氏による、生涯続くワインライフを楽しむためのスペシャルコラム『月の港に続く道』第6回。
今回は、人生の中でのワインとして、「ハレとケ」について考えてみます。
ハレの日を飾るワイン、また日常であるケの日にふさわしいワイン、それは「緊張と緩和」の演出とも言えるでしょう。
それぞれのワインの選び方を解説します。
「月の港」ボルドーへ続く道を、楽しみながら歩いてみましょう。
第6回 緊張と緩和~ワイン・オシャレ考~
デイリーワインとプレミアムワインで「ハレとケ」の演出を
日本には古来、「ハレ(晴)とケ(褻)」という世界観があります。
ハレの日は冠婚葬祭や祭りなどの非日常であり、ケの日は普段の日常生活を示します。
日本人はケの日は質素堅実に過ごし、ハレの日には晴れ着をまといご馳走を食べることで暮らしにメリハリをつけてきました。
このメリハリは心の緊張と緩和をもたらします。
幸福感や達成感、笑いなど人間固有の感情を引き起こすのは、この心の緊張と緩和であると考えられています。
長らく、日本ではワインはハレの日の飲み物でした。
入手できるワインの種類が少なく高価で、よそいきマナーで飲んでいた時代では当然でしょう。
しかしながら現在、ワインはご近所のコンビニでも気軽に入手でき価格もむしろ他のアルコール飲料より安いものさえあります。
まさに国民酒です。
このような時代になった今、私たちはハレの日の特別なワインとケの日のデイリーワインについて、メリハリをつけて区別して考えなければなりません。
ハレの日ワインとケの日ワイン、それぞれの選び方
オールドワールドと呼ばれるワインの伝統国(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン等)には、ブドウ畑の区画や栽培方法、醸造方法や熟成期間まで詳細に規定した格付けというブランド保護の制度があります。
その格付けはラベルに表記されています。
各国の王室や政府、企業が接待で饗するワインはほとんどが最高級の格付けワインの中から選ばれます。
まさにハレの日のワインです。
格付けワインは、ヨーロッパワインの場合はAOC(フランス)、DOCG(イタリア)、VDP(ドイツ)、DO(スペイン)と表記された格付けワインであれば間違いないでしょう。
一方、生産者が自由に醸造し販売するワインは、地酒と呼ばれ安く流通します。
高級格付けワインと変わらない品質のものもありますが、細かい規定が無いので玉石混交です。
また、安いワインを大量にバルク(樽)で買ってブレンドしたり、ブドウ果汁を輸入して工場で醸造して製造する更に低価格のワインもあります。
これらがケの日のワイン、デイリーワインとして消費されています。
デイリーワインは費用対効果に目が奪われがちですが、飲む頻度が高いので食品としての安全性に気を使わなければなりません。
ブドウ果汁を工場で発酵させた工業的なワインや、温暖な地で大量生産するために酸が足りず人工的に補酸したもの、亜硫酸を限界濃度まで使用したワインはできるだけ避けたいと思います。
ラベル表示やワイナリーをWEB等で検索して、製造の履歴や生産者の顔が見えるワインを選択することで、安心安全を担保する必要があります。
日常であるケの日に支障が生まれると「気枯れ(ケガレ)」になってしまうそうです。
デイリーワインは使い勝手も重要です。
フランス人は毎夏一カ月以上の長い期間、南部のプロヴァンス地方やラングドック・ルーションにヴァカンスに出かけます。
地中海に近く、海の幸にも山の幸にも恵まれた環境の中では、良く冷やしたロゼが主役になります。
避暑地での日常を過ごすうえで、冷やしたロゼであれば肉、魚、野菜などほとんどの食材と相性が良く、デイリーワインとしての使い勝手に事欠きません。
赤、白、フルボディやライトボディなど様々用意するよりロゼ1本で事が足りる利便性が重宝されています。
夏場フランス南部のワイン店で販売しているワインの半分以上はロゼワインです。
ワインが身の回りに溢れるようになり、私たちの身近なワインライフでも緊張と緩和が楽しめるようになりました。
ケの日のワインがあってこそ、ハレの日のワインが更に素晴らしく感じられます。
メリハリのあるワイン選択は、私たちの生活レベルをワンランク引き上げてくれるでしょう。
今日もワインに関するよもやま話をしながら、月の港に続く道を歩むことにしましょう。
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MBA経営学修士でありアジア各地にて貿易事業を展開するビジネスパーソン。
WSET LEVEL 3 AWARD IN WINES、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、J.S.Aワイン検定講師の資格を持ち、ワインをビジネスに活用する「ビズ・ワイン」を提唱。
著書に『「ビズ・ワイン」革命始まる』を持つ。