月の港に続く道
【月の港に続く道 第4回】ワインで心を充足する「瞑想ワイン」~ワイン・オシャレ考~
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『「ビズ・ワイン」革命始まる』著者の今西正典氏による、生涯続くワインライフを楽しむためのスペシャルコラム『月の港に続く道』第4回。
「ワインLOVERのストレッチ」が終わり、いよいよ新章「ワイン・オシャレ考」がスタートします。
今回は、NYを中心に広がる「瞑想ワイン」を通じて、ワインがもたらす精神的な充足について解説します。
「月の港」ボルドーへ続く道を、楽しみながら歩いてみましょう。
第4回 「瞑想ワイン」~ワイン・オシャレ考~
ワインは心も充足させる
ワインの大きな魅力に、料理との相互作用「マリアージュ」があります。
私もワインを選択する時には、まず料理や食材とのマッチングをイメージします。
しかし今、ニューヨークを中心にWINE MEDITATION やMINDFUL DRINKINGという概念が発信されています。
瞑想ワインという言葉は昔からイタリアで使われており、料理と一緒ではなくワイン単体で楽しめるワインのことを指していたようです。
しかしながら、現在はストレスの多い大都会でゆっくりとワインだけを飲みながら瞑想し心をリフレッシュさせる一種のセラピーのような位置づけで語られています。
精神的生理的効果を求めた飲み方ではありますが、成熟した都市生活にワインが溶け込んだある種スピリチャルなオシャレ感をも感じさせます。
ニューヨークで瞑想ワインとして人気があるのは、イタリア、ヴェネト州の高級赤ワイン、アマローネのようです。
コルヴィーナ・ヴェネローゼというイタリア品種のブドウを使い、収穫後陰干しして濃厚になった状態で絞りワインにします。
黒系果実、煮詰めたプルーン、チョコレート、葉巻などの複雑で濃厚な風味のフルボディの赤ワインになります。
ワインだけで香りと味わいにかなりの深みを感じることができます。
私のお気に入りのワインでもあります。
WINE MEDITATIONの実践
WINE MEDITATIONはヨガと親和性があります。
実際にニューヨークでは、60分のヨガセッションと30分のWINE MEDITATIONを組み合わせたようなクラスがたくさんあります。
大振りなグラスに瞑想ワインを注ぎます。
静寂な環境で姿勢をただし一人グラスを傾けます。
グラスを満たす香りが織りなすアロマをひとつづつ探り、ブドウが育った大地やワイナリーや収穫された年代の自分の生活などについてゆっくりと回想します。
そのまま深呼吸したりします。
口に含んだワインのアルコール成分が喉を通るにつれて体が感じる変化を追い神経を敏感にします。
そしてスワリングし、10分、20分を経てワインに起こる変化についても気を配ります。
一杯のグラスワインを20~30分かけてゆっくり味わい終了します。
その間ワインに集中する以外のことは全て排除し、一定時間精神をピュアな状態にすることでストレスをリセットしていきます。
WINE MEDITATIONはワインの新しい進化の形
ワインはまさに瞑想の友にふさわしい飲料です。
一滴の水さえも加えない純粋な果実のみから作られ、ボトルの中に熟成期間という時間が詰まっています。
ブドウだけでできているにかかわらず、他の果物や植物、スパイスや動物臭までも感じる奥深さはカルトチックでもあります。
WINE MEDITATIONの有効性は、ストレスが多い日本の都市生活にも十分に当てはまります。
瞑想ワインの選択については、議論の余地があり何も制約はありません。
日本人気質としては、自然ありのままのビオワインやオレンジワインもいいかもしれません。
色々と試してみる価値があります。
ワインの魅力は人をつなぐことでもありますが、WINE MEDITATIONという一人の時間を充実させる楽しみ方は、ある種画期的なワインの機能の進化とも言えます。
ワインはギリシャ、ローマの時代から人間が人間らしく生きるための特別な飲物でしたが、現代に至ってもなお時代に即した新しい飲み方が開発できるその柔軟性とそれを追求する人間の想像力について感心させられます。
今日もワインに関するよもやま話をしながら、月の港に続く道を歩むことにしましょう。
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MBA経営学修士でありアジア各地にて貿易事業を展開するビジネスパーソン。
WSET LEVEL 3 AWARD IN WINES、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、J.S.Aワイン検定講師の資格を持ち、ワインをビジネスに活用する「ビズ・ワイン」を提唱。
著書に『「ビズ・ワイン」革命始まる』を持つ。