初心者でも3分でわかる!ワイン用語集
貴腐ワイン
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特殊なカビによって果実内の水分が蒸発した葡萄で造られる非常に甘いワイン
枝についている状態の完熟した葡萄果実に貴腐菌(ボトリティス・シネレア)というカビの一種が生えることでできる「貴腐葡萄」を使用して造るワインが貴腐ワインです。
果実についた貴腐菌が果皮のロウ質の組織を破壊することにより、果実内の水分が蒸発し、果汁が濃縮されて通常の完熟葡萄よりはるかに高い糖度を持つようになります。
この状態の葡萄を貴腐葡萄と呼び、それを用いて造られるワインは、非常に甘く優雅な風味に仕上がります。
貴腐葡萄が完成する条件は厳しく、収穫量が多くはないため、貴腐ワインは高価なものが多いことでも知られています。
【初心者でもすぐわかる】貴腐菌のおかげで濃縮還元されたとっても甘くて貴重なワイン
まるでハチミツやシロップのような極甘口の貴腐ワインは、自然の条件が揃って初めて生まれる貴重なワインです。
貴腐菌が果実に感染すれば良い訳ではなく、下記の状況でなければ、貴腐葡萄にはなりません。
● 完熟した果実であること
● 朝に霧が生じていること(貴腐菌にとって快適な湿度と温度)
● 昼は晴れて乾燥していること(果実から水分が蒸発しやすい)
● 霧や晴天などの天候の条件が1ヶ月以上続くこと
なかなか厳しい条件ですね。
こうした条件を満たせず、例えばせっかく完熟した実に貴腐菌がついても雨がずっと続いてしまうと、単なる腐敗になってしまうことも珍しくないとか。
また、貴腐菌は、未熟な状態の果実や葉や花などを腐らせる灰色カビ病の原因でもあり、もともとは葡萄農家の敵とも言える存在です。
条件がそろった時にだけ葡萄果実を貴腐化させる一方、葡萄にとって害になりやすいという点も、貴腐ワインの生産を難しくする要因です。
さらに、無事に葡萄が貴腐化したとしても、収穫できた果実から得られる果汁はかなり少なくなります。
貴腐化している果実は水分が蒸発しているからです。
その上、収穫においても、1つの房の中でも果実の状態がまちまちであることから、慎重な選果が必要になります。
中には、状態の良い果実のみを手摘みで収穫することを何度も繰り返していくという、収穫だけでも大変な手間のかかる手法を選択している造り手も。
また、果汁が高い糖度になっていることから、発酵の工程も通常のワイン造りとは異なることが多く、技術も必要になります。
このように、原料を得ることが難しく、得られたとしても量が少なく、さらに手間や技術も必要な貴腐ワインは、通常のワインと比較して高価になるのも頷けます。
貴腐ワインには、「世界三大貴腐ワイン」が存在します。
フランスのソーテルヌ地方の貴腐ワイン、ドイツの格付けのひとつトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイ地方で生産されるトカイ・アスーの3つです。
世界でも有名な貴腐ワインには、ソーテルヌの「シャトー・ディケム」があります。
最高峰の貴腐ワインとの評判を得ているシャトー・ディケムでは、生産数の少なさに加え、不作の年には貴腐ワインを生産しないということでも知られています。
シャトー・ディケム 1995 750ml 貴腐ワイン ソーテルヌ 特別格付1級
そして、日本でも貴腐ワインを生産しています。
サントリーの登美の丘ワイナリー(旧・サントリー山梨ワイナリー)にて1975年に日本で最初の貴腐葡萄が発見されて以来、貴腐ワインの生産に取り組み続けており、非常に希少な日本ワインかつ貴腐ワインを度々リリースしています。
日本ワイン サントリー 登美の丘ワイナリー 登美 ノーブルドール 2008 [白ワイン 甘口 日本 375ml ]
極甘口の貴腐ワインは、ブルーチーズなどのクセや塩味が強いチーズやフォアグラ料理などコクのしっかりした料理とのペアリングが一般的とされています。
また、同じくらいのしっかりした甘さのあるデザートやフレッシュフルーツなどとも好相性です。
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