もう迷わない!プロが実践するワイン選びのコツ
第2回 ワイン選びに知識は不要?お店の人を積極的に使うテクニック
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ワインショップオーナーがワインの選び方を丁寧に解説するスペシャルワインコラム「もう迷わない!プロが実践するワイン選びのコツ」第2回は、「ワイン選びに知識は不要?お店の人を積極的に使うテクニック」。
ワインショップのスタッフの知識を借りてワインを選んでもらう方法について、詳しく解説します。
実は、ワインショップにお任せすると、ワインを的確に選んでもらえるだけにとどまらない、さらなるメリットも……!?
執筆は、ワインショップ「VINORAK」を経営する竹村栄司氏。
ワインのプロである竹村氏も活用しているテクニックについて、わかりやすく解説していただきました。
このコラムを読めば、お願い上手になれるかも?
もう迷わない!プロが実践するワイン選びのコツ -第2回-
ワイン選びに知識は不要?お店の人を積極的に使うテクニック
ワインを自分で選べるようになるには、何が必要なのでしょうか。
「有名な産地を知っておきましょう」
「このブドウ品種の特徴を押さえておけば恥をかかない!」
といったことは、ワイン本によく書かれていますよね。
でもこれって本当でしょうか?
本はお金をとって読んでもらう以上、役に立つ情報が求められます。
だから知識を提供するのは、ごく当然のことです。
ですが、実は多くの人がここでつまづいてしまいます。
「ワインは知識が必要なのか、知識がないと恥をかくかもしれない」
「初心者は下手に手を出さない方がいいのかも……」
そう感じて、結局「私、ワインは分からないの」というスタンスになっていませんか?
断言します。
ワインを楽しむために、有名な産地やブドウ品種を最初に覚える必要は全くありません。
むしろ遠回りだと言ってもいいです。
知識でワインを選ぶのはプロの仕事です。
ワインのプロフェッショナルになりたい人、あるいはワインを勉強して詳しくなりたい人なら、知識から入っても良いでしょう。
でももしあなたが「おうちでワインを楽しみたい」「友だちのためにワインを選んであげたい」と考えてワインを選ぶのなら、ソムリエになるための気の遠くなるようなお勉強は全く必要ありません。
いくつかコツを知っておくだけで、あなたにぴったりの美味しいワインを選べるようになります。
もちろん、恥などかく必要はありません。
あなたに恥をかかせるような人とは、金輪際会わなくても大丈夫です(笑)。
さて、ワインの選び方には2種類あります。
一つは自分で選ぶこと、もう一つはお店の人に選んでもらうことです。
このコラムのゴールは、あなたが「自分で」ワインを選べるようになることです。
ですが、今回はお店の人に選んでもらう際のコツについてお話しします。自分で選べるようになるためにも、強い味方をつけておくのは必ずやプラスになります。ぜひ、最後までお付き合いください。
お店の人にワインを選んでもらうために必要な準備とは?
まずやるべきことは……そう、お店に行くことですね。
ここで言うお店は、スーパーやディスカウントストアではなく、百貨店のワインコーナーか、ワインの専門店です。つまり、ワインのプロが常駐しているお店です。
いきなり専門店のスタッフに声をかけるのは少し気後れしてしまうかもしれません。なんとなく「ワインは敷居が高いもの」と考えてしまうので、ワインを扱う人たちもまた、気難しい人に見えてしまうからです。
ですが、ワインの仕事をしている人のほとんどが、純粋にワインが好きで仕事をしています。そしてその知識を、お客様がワインを選ぶときの役に立ててほしいと願っている人が多いです。
だから、勇気を持って声をかけてみてください。
きっと、その方は満面の笑みで、あなたの役に立てるよう全力を尽くしてくれるはずです。
少なくとも、初めて訪れたお店であれば、最初はお店の人に選んでもらうことをおすすめします。なぜかというと、そのやりとりの中でお店の人との距離が近づきますし、その人の「クセ」が見えてくるからです。
「えー?最初からいきなり?」と思われるかもしれません。ですが、お店の人からすると、初めてのお客様で何も言わずにスーッとワインを買って帰られたら、「きっと詳しい人だ」と思って、次からも同じように接客してしまいます。それが続くと、どうでしょう。だんだん自分は初心者だと言い出しづらくなりませんか?(笑)。
ワインを選んでもらうにあたって、お店の人に伝えるべき3つの条件
お店の人に選んでもらうにも、ちょっとしたコツがいります。
といっても特にルールがあるわけではありませんが、次の3点を意識して伝えることで、お店の人はかなり的確に選ぶことができます。
(1) 予算
ワインは金額の幅が広い嗜好品です。例えば「2000円から3000円くらいで」とざっくりと伝えれば、自ずと選ぶ範囲が定まってきます。
(2) 目的(贈り物?自宅で?持ち寄りパーティー?いつ開ける?)
プライバシーに触れるような内容を伝える必要はありませんが、自分で楽しむのか、誰かにあげるためなのか、そして近日中に飲む予定なのか、おうちにストックしておきたいのか、といったことがわかると、予算とのバランスを見ながらさらに選択肢の幅を狭めることができます。もし一緒に食べる料理まで決まっているなら、かなり焦点が定まってきますので、ぜひ伝えてみましょう。
(料理との相性については、次回以降に詳しくお話しします)
(3) あなたのワイン経験値
あなたがこれまでどんなワインを飲んで美味しいと感じたかを伝えてみてください。これは間違いなく、お店の人にとって最大のヒントになります。
もし今までにワインを飲んで美味しいと感じた経験がなければ、それもまたヒントになります。知識や経験がないことは全く恥ずかしいことではありません。お店の人の一番の望みは、あなたが知識を持ってることではなく、あなたが美味しいと喜んでくれるワインを選ぶことだからです。
例えば、今から友だちの家でホームパーティーがあり、そこにワインを持っていく、という場合。
「3,000円まででワインを1本選んでもらえませんか?今日たこ焼きパーティーがあって、そのために今から持っていくんです。みんなワインは好きなので、なんでも喜んでもらえるとは思うんですが…」
という具合に話しかけてみましょう。
(意外かもしれませんが、私の周りではよくたこ焼きとワインを楽しみます)
これだけでも、お店の人にとってはヒント満載です。
・予算3,000円まで
・合わせる料理はたこ焼き
・今から持参(夏なら今から冷やさないといけないワインは除外)
・飲むメンバーはワインに抵抗がないし、強いこだわりもないと想像
このヒントを頼りに、お店の人はきっとあなたに合った面白いチョイスをしてくれるはずです。もちろんどのワインが合うかという正解はありません。そのチョイスもまた、お店の個性だからです。
選んでもらったついでに、そのワインを開けるときのアドバイスや、温度のアドバイスなども伝授してもらいましょう。
(ワインの保管、提供温度についても次回以降でお話しします)
お店で相談することは、ワインを開拓する足掛かりにも
さらに、ワインをお店の人に選んでもらうと、もう一つ良いことがあります。
それは次にお店を訪れたときに起こります。
お店の人が顔を覚えていたら、向こうから
「この間のワイン、お気に召しましたか?」
「前回のと似てるワインがあるのですが、試してみませんか?」
と、声をかけてもらえるはずです。
つまり、前回のワインを基準にして、そこから裾野を広げることができるのです。今まで未開の地だったジャングルに、いきなりベースキャンプが設営されたようなもの。まずはベースキャンプから近い森を探検して、少しずつ開拓していくのです。不安になっても大丈夫。すぐ後ろに優秀なトレーナーがついてきてくれていますよ。
これは一度ワインをお店の人に選んでもらったからこそできる技です(というほど大袈裟なものではありませんが)。もし選んでもらったワインが気に入ったら、お店の人が顔を忘れてしまう前に再訪するといいですね!「こないだ選んでもらったワイン、おいしかったです!」という最高の切り口がありますから。ぜひ実践してみてください。
ワインはコミュニケーションです。
それはワインを一緒に飲んで生まれるものもあれば、ワインという「開けないと分からない飲み物」を選ぶために、一緒に考え、悩み、議論する中でも生まれます。ワインを全く開けなくても、ワイン談義に花が咲いてしまう人はたくさんいます(私もです)。めんどくさい人に絡まれるのは避けたいものですが、適度なコミュニケーションはワインの楽しみの一つです。
ちなみに「近所にワインショップはない」「ネットショップで買うほうが楽」という方も、ご安心を。個人が営むような小さなネットショップであれば、メールや問い合わせフォームなどでリクエストしてワインを見繕ってもらうことも可能です。
ワイン初心者に限らず使っていきたい「お店に任せる」という方法
今回は、お店の人にワインを選んでもらう時のコツをお話ししました。
「初心者だから」というわけではなく、お店の人にワインを選んでもらうのは上に挙げたようにたくさんのメリットがあります。私も初めてのお店ではワインを選んでもらって、そこからコミュニケーションを楽しむことはよくあります。
もちろんワインショップだけでなく、レストランでも同じこと。ワインをお任せすることで、「わたしはあなたを信頼してます」と示すことができます。ソムリエさんと仲良くなれれば、次に訪れたときもずっと楽にワインを選ぶことができます。
次回からはいよいよ「自分で選ぶ」際のコツをお話しします。(焦らしてすみません)
専門的な知識などなくても大丈夫。
ポイントは重さ、色、料理です!
一つ一つ紐解いていきたいと思います。それでは。
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株式会社ワインクレディブル 代表取締役。
JSA認定ソムリエ、WSET Level3 Award in Wine & Sakeの資格を所有。
ワイン専門商社にてチーフバイヤーとしてフランスワイン輸入に携わってきた経験を活かし、オンラインワインショップ「VINORAK」、ワイングラス「Sydonios」販売代理店を運営。
InstagramやYoutube、noteにてワインに関する様々なトピックを解説している。